石巻市雄勝町・葉山神社への被災古文書返却

12月3日の「河北新報」朝刊で、9年9か月前の東日本大震災で被災した、石巻市雄勝町の葉山神社所蔵古文書の返却についての記事が掲載されました。

葉山神社の古文書、修復が完了 津波で被災、仙台のNPOが9年半作業 石巻・雄勝https://www.kahoku.co.jp/special/spe1062/20201203_02.html

本務でもある、地域に残された歴史資料の救済・保全活動の一環です。もちろん、私一人で行ったものではなく、記事にあるように市民ボランティアや、被災地外からの支援の結果、返却まで至りました。

ただ、80件を超える救済した資料のうち、返却まで至ったのは2割ほどです。さらに、2019年台風19号での呼びかけを契機にして、津波の被災にかかわらず、所蔵者が大事に保管していた被災古文書が確認される、という出来事もありました。想定されていた「宮城県沖地震」での被害が予想されていた北上川の中流域での調査も、限られた人員その他の様々な制約もあって十分出来ていません。被災していた、廃棄された、というような情報も時折入ってくる、9年9か月目の現在です。

一方、上記の古文書ですが、歴史的な価値はもちろんですが、現在も続く各種の神事で利用されています。いわば「現役の文書」です。古文書それ自体の存在や継承が、地域の紐帯になっているという例は、日本各地に見られるのですが、私自身としてはこの葉山神社の事例で、初めて実際の様子を目の当たりにしました。

これらの古文書があのとき消滅していたら、地域での様々な祈りが途切れていた、ということになります。

それを考えると、自然災害やその他の事情で消滅の危機にある古文書を救済すると言うことは、歴史を研究する人がその史料を守るということにとどまらない、様々な意味があるということになるのだと考えています。

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