報告書『COVID-19の下で、記録に向き合う―博物館、資料レスキュー活動と状況の記録』

2022年3月11日に刊行した報告書、3件目は、佐藤大介・川内淳史編『COVID-19の下で、記録に向き合う―博物館、資料レスキュー活動と状況の記録』です。

 本報告書は、2020年7月および2021年1月にオンライン開催した、「北海道・東北地区の歴史資料保全に関するワークショップ」での報告に基づくもので、7編の論文を収めています。

 第1部「COVID-19の下での博物館・史料レスキュー」(黒田風花、川内淳史)では、感染拡大の中での、地域の文化施設である仙台市博物館の活動について。また2019年台風19号など頻発する災害の中で、宮城県を中心として実施されている「史料レスキュー」の活動がどのように行われたかをまとめます。活動自体の停滞はもちろん、人がつながるの場としての役割が難しくなってしまうという問題が起こっています。

 第2部「震災資料と現在」は、いわゆる「震災資料」の現状についてです。1995年1月17日の阪神・淡路大戦災は、災害それ自体の記録を組織的に収集する活動のきっかけともなった出来事であり、その後日本列島各地で起こった広域自然災害の後の記録保存活動にもつながっています。
ここでは阪神・淡路大震災の記録を収集している尼崎市立歴史博物館あまがさきアーカイブ(兵庫県尼崎市)と、2004年10月23日の新潟県中越地震での記録保全に取り組む長岡市中央図書館文書資料室(新潟県長岡市)での、それぞれの「災害資料」の現状と課題についての記録です。
 私自身が新型コロナウイルス関係資料の収集を思い立ったのは、そのような活動を知っていたからでした。「災害資料」をめぐる問題は、それぞれの災害はもちろん、新型コロナウイルス関係記録の保存と継承においても共通しているだろうと考えています。

 第3部「COVID-19を記録する」は、目下の新型コロナウイルスの感染拡大状況の中で起こっている社会状況を、どのように記録していくかという実践と模索に関する取り組みです。浦幌町立博物館、小樽市総合博物館という北海道の2つの博物館、そして私・佐藤自身の取り組みの報告と今後の課題についての報告です。

 日本での感染拡大から2年を過ぎても、状況は流動的です。この本の「あとがき」は、期せずして「そのことの記録」にもなりました。 

 100年前の「スペイン風邪」(インフルエンザ)流行など、過去の感染症と人びととの関わりが、目下の状況の中で再び注目され、記録の掘り起こしが進んでいます。それが出来るのは、当時の記録が残されているからです。本書が、「いま」歴史文化活動や記録保全を行うことはもちろん、将来の人びとにとって「この時代」を知る手がかりとなっていくことを願っています。

書誌情報
◎書誌情報
・書名 COVID-19の下で、記録に向き合う―博物館、資料レスキュー活動と状況の記録
・編著者 佐藤大介・川内淳史
・刊行年 2022年3月11日
・出版社 東北大学災害科学国際研究所 歴史文化遺産保全学分野
・制作 蕃山房

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