『丸吉皆川家日誌 天保編』を刊行しました

 2022年3月11日に、学術報告書3件を刊行しました。昨年秋から2月にかけて格闘した仕事の成果です。今回はそのうち、『丸吉皆川家日誌 天保編』の紹介です。東北大学機関リポジトリTOURで全文のPDFファイルを閲覧およびダウンロード出来ます。多くの方にご覧いただければ幸いです。

http://hdl.handle.net/10097/00134566

 北上山地に位置する磐井郡藤沢町(岩手県一関市)の有力な商家だった丸吉(まるきち)皆川家では、5代目当主の久蔵と、娘婿の六代目喜平治の二人によって、天明の飢饉(天明3年・1783)から明治6年(1873)にいたる、約90年間の日誌が記されました。この「丸吉皆川家日誌」には、地元の藤沢町のことはもちろん、仙台城下町や江戸・京都・大坂との取引を行っていた関係から、仙台藩および日本各地の出来事や社会、経済に関わる出来事・風聞が豊富に記されています。

 この日誌を、2015年秋から、所蔵者や市民の有志「青葉山古文書の会」にて全文解読を進めてきました。全部で約60万文字(400字詰め原稿用紙約1500枚)におよぶ膨大なものとなりました。

 今回は、まず久蔵が記録した、天明から天保15年(1844)までのものを公刊しました。特に記事が豊富なのは、天保4年(1833)以降です。いわゆる天保の飢饉にあたります。「長い災害の時代」の社会と人々の様子を知る手がかりとなる、貴重な記録です。

 冒頭では丸吉皆川家、および天保期の記録についての論説を載せ、内容を読み解く手がかりとしています。

 本書のほとんどは白文の漢文(日本の書き言葉として発達した漢文)が中心で、読み慣れない方には難しいかもしれませんが、PDF版では語句検索で、「藤沢」や「仙台(城下町:御城下)」、「江戸」など地名や語句を検索出来ます。まずは身近な地名の検索から、江戸時代の書き言葉に触れる機会としていただければとも思います。

 書籍版は非売品で、宮城県や仙台市、岩手県の主要な公共図書館に寄贈を予定しています。なおURLの共有はもちろん、ダウンロードしたファイルを他の方に提供することも、ファイルに改変を加えないという条件で可能です。

 今後、ブログにて内容を紹介する投稿をしていきたいと考えております。

◎書誌情報
 丸吉皆川家日誌 天保編 
 編著者 佐藤大介・青葉山古文書の会
 発行年月日 2022年3月11日
 出版社 東北大学災害科学国際研究所 歴史文化遺産保全学分野
 制作 蕃山房

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